こんにちは、チャイフ(@chaif123)です。
ある日、賃貸マンションの更新のお知らせとともに、「賃料改定のお知らせ」が届きました。貸主側からの賃上げですね。
紆余曲折あり(ない)、最終的に賃上げを拒否できるまでの一部始終をお話ししたいと思います。
それでは!
Contents
お手紙が届きました
ある日、賃貸マンションの更新のお知らせとともに、「賃料改定のお知らせ」が届きました。内容をフランクにまとめるとこんな感じです。
- 賃料改定しますのでよろしくね!
- 合意のサインをして返送してね!
- 返送がない場合も合意とみなすね!
- 合意したくない場合はホームページから問い合わせてね!
- ちなみにタイムリミットは10日間だよ
返送がない場合にも合意とみなされるなら、合意書が存在する意味がないだろ…と思いました。合意する場合のアクションはわかりやすく提示し、合意しない場合のアクションがやや面倒(ホームページから問い合わせ)なのがなんともやらしいです。おそらく僕の住んでいるマンションだけでなく、他のマンションの同じようなやり方なのでしょう。
困惑しました
まず、ビビりました。というか、困惑しました。
法律的にも賃貸は借主に有利なようになっていて、ある程度強気でいいという話は聞きます。今回のも「受けなくていい」ような気はしましたが、「返送しないと合意」となると、無視するわけには行きません。
しかし、具体的な対応方法がわかりません。いくつかネット上でも事例を調べてみましたが、いまいち状況にヒットする情報が見つかりません。
迫る期限。焦るぼく。このままではまずいです。
オンラインコミュニティ「OneStep」で相談してみた
僕は、「OneStep」というオンラインコミュニティに所属しています。
オンラインでのつながりなので、いろんな職種の方がいますし、いろんな経験をしている方もいますし、それぞれ異なるアンテナで情報収集をされています。OneStepにて「賃料改定のお知らせ」に関する相談をしたところ、すぐにたくさんの有力情報をもらえました。要約するとこんな感じです。
- 基本的に、とりあえず拒否でいい
- 借地借家法的に、合意なしに賃料増額はできない
- 参考になる実例をあげた記事のURLを共有
- 「契約更新」に関してなら拒否でいい。「再契約」に関してなら話が変わるので
中には、不動産業界で働くメンバーからの専門的なコメントももらえました。
参考:ジョハリの窓
調べたこと
いただいた情報をもとに、自分の方でも改めて情報収集・情報整理をしてみました。
もらった参考URLを読んだ
まず、もらった参考URLを読みます。体験談系の記事は具体的なプロセスがとても参考になるなと思いました。
- 知らないと損:賃貸アパートの家賃改定は拒否できる【注意点あり】 : https://mori-k3.blog/rent-revision-can-be-refused/
- 家賃の値上げに抵抗して現状維持になった話 : https://surumegohan.hatenablog.com/entry/20210518/1621320701
借地借家法を読んだ
次に、根拠を持って意見を述べるためにも、一次情報たる借地借家法を読みました。と言いつつ、明らかに関係がなさそうな箇所は飛ばしながらかいつまみ読み、ですが。
「借地借家法」とググれば、全文をすぐに参照できました。便利な世の中ですね…。
その中で、特に本件に関連がありそうな箇所を抜粋し、僕の理解を書いてみます。
第二十六条(建物賃貸借契約の更新等)
- 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
- 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
- 3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
要するに、たとえば1年契約なら1年前〜6ヶ月前までの間に更新をしない旨の通知や、「条件を変更しないと更新しないぞ」という通知をしない場合は、それまでと同じ条件で契約更新したとみなされる。「当事者が」ってのは、貸主と借主の双方を指すようですが。
また、それを通知しても借主が使用を継続する場合、それに対して貸主が異議を唱えなかった場合にも同じ条件で契約更新したとみなされる。通知を受けていたとしても住ませてほしい場合は、住める。いきなり追い出されて住む場所がなくなるとヤバいですからね。まぁ、借主に有利な内容ですね。
第二十七条(解約による建物賃貸借の終了)
- 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
- 2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
さっきの第二十六条の2,3項の前提ですね。貸主から(更新をしない旨の通知ではなく)解約の申し入れがあった場合は、その後6ヶ月後に契約が終了する。なるほど。
第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
- 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
本件に最も関係する箇所ですね。要するに、第二十六条の「解約しない旨の通知」とか第二十七条の「解約の申し入れ」の説明をしてきたけど、そもそも相当な理由がない限り、貸主から借主に対して一方的な「解約しない旨の通知」や「解約の申し入れ」はできない、ってことですね。
言い方を変えれば、通知や申し入れ自体はできるが、ただするだけでは効力がなくて、「相当な理由」とセットで通知や申し入れをする必要がある、ってことになります。「通知」や「申し入れ」を受けた借主からすれば、「同意をしない」「根拠を求める」ことは真っ当な反応、というわけですね。だんだんわかってきました。
第三十二条(借賃増減請求権)
- 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
- 2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
- 3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
「増減」なので、「貸主が増額したい」「借主が減額したい」の両方に適応される条項です。第二十七条で言っていた「相当な理由」を具体的に説明した内容でもあります。
要するに、家賃の増減は土地や建物価格の向上・その他の経済事情・近くの類似建物と大きな乖離がある場合などの理由があれば申し入れることができる、ってことですね。
とはいえ、「根拠があること」は「相手に納得してもらえる」の必要条件であって十分条件ではありません。相手の合意を得られない場合は裁判となり、裁判が確定するまでは、それまでの金額の支払いで問題ない。確定した後に、結果的に不足がある場合は利息含めて精算する。
※僕の解釈が間違えている可能性や、ケースによっては本記事で抜粋していない条項が関連してくる可能性もあるので、くれぐれも一次情報を参照するようにしてください。
路線価を調べた
あとは、先述の参考URLに倣い、自分が住んでいる区域の路線価を調べました。結論、僕が入居した頃から、路線価は変わっていないことがわかりました。
管理会社へチャットボットにて「お知らせ」に回答
さて、僕のアクションは決まりました。「根拠を示してくれ、もし難しい場合は賃料を据え置きにしてくれ」です。借地借家法を読むのは必要なプロセスでしたね。
「賃料改定のお知らせ」 に書いてあったURLに遷移し、ホームページでの問い合わせ先がチャットボットから、上記を連絡しました。
ただ、メールではなくチャットボットであるため、「問い合わせた」という証拠がこちら側に残らないという問題が発生するので、念のためにスクリーンショットを取っておきました。
メールか電話で、何かしらの連絡が来るとタカを括っておりましたが、2,3日音沙汰がありませんでした。
管理会社に電話をし、応対結果を確認
もうあと2日しかなかったので、さすがに待てないと判断し、管理会社に電話しました。担当の者が不在とのことで、翌日に折り返すとのこと。2日の猶予を持って連絡をして良かった…と思いました。これでもギリギリですね。
翌日、管理会社から折り返しがありました。
もし何かあれば電話します。何もなければ、そのまま受理されたと思ってください
これで安心だと思って電話を切ってから少ししてから、あとちょっとだけ問題が残っていることに気が付きました。本当に家賃が据え置きになったかどうか、確証を持ち切れないです。不安なまま日々を過ごすのもイヤなので、その翌日にもう一度管理会社に電話をして、顛末を聞きました。
引越し時の費用、家賃交渉、etc.借地借家法は一読する価値あり
いかがでしたでしょうか。
今回の一件は、たいへん勉強になりました。有識者が周りにいたことにも感謝しましたし、結果的に家賃増額を回避できてよかったです。
しかし改めて思いますが、最初に来たお知らせの書きっぷりが「もう家賃増額は事実上決定したので、あとはサインだけお願いしますね」のようなスタンスであるのは、何も知らないとかなり弱気になってしまうと思います。
不動産関係の仕事をしていなかったとしても、「家を借りる」というのは多くの人にとって長期間にわたって関係してくるものです。賃貸に関してただ「知識がない」というだけで搾取されるのはなんとももったいないです。借地借家法はざっと読むだけなら1時間、しっかり読んでも2時間もあれば一読できるくらいのボリュームだったので、一読してみてもいいのでは、と思いました。
自分の身は自分で守っていきましょう!
それでは。
チャイフ